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ものづくり補助金POファイナンスの導入に当たっての会計法上の論点

POファイナンス」は、20194月、平成30年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(以下「ものづくり補助金」)のつなぎ融資を円滑にする仕組みとして、採用されました。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/2019/190418mono.htm 

これに先立って、中小企業庁経営支援部技術・経営革新課(イノベーション課)は、会計法上の論点整理のため、関係部署と事前協議を行い了解を得た結果、採用へ至ったとお聞きしております。

Tranzaxは、この事前協議の質疑応答のための資料作成についてイノベーション課にご協力しましたので、その際に論点となっていた事項と、それに対する回答の考え方について、以下、ご紹介します。

債権金額が検査完了後まで確定しないことを対抗できるのか?

POファイナンスは交付決定通知をもって電子記録債権を発生させる仕組みとのことだが、補助金は、実績報告書が提出され検査が完了するまでは、具体的な金額が確定しない。このような性格の補助金を、どのように電子記録債権として発生させるのか。

また、補助事業者が金融機関に電子記録債権を担保として供した後に、万一返済が滞り、担保権が実行された場合、補助事業が適切に執行されていないにもかかわらず、補助執行団体が金融機関に対して交付決定額を支払う義務を負わされることはないか。

ものづくり補助金POファイナンスにおいては、交付決定通知に記載された交付決定額をもって電子記録債権を発生させますが、最終的な補助金確定額が当該金額と異なることが制度上当然にあり得るため、電子記録債権の発生時に、「補助金確定額を超える部分の金額については、その支払いを拒むことができる」旨の抗弁を同時に記録することにしております。 

したがって、補助執行団体は検査完了により確定した補助金の額を超える部分の金額については、その支払いを拒むことができます。

さらに、「交付決定の取消・変更があった場合には、当該取消又は変更後の補助金額を超える部分については、その支払を拒むことができる」旨の抗弁も記録しますので、補助事業が適正に執行されていない場合、補助執行団体は、交付決定の取消・変更を行って、電子記録債権を譲受した金融機関に対して、当該取消又は変更後の補助金額を超える部分の支払いを拒むことができます。

電子記録債権を使うと金融機関が融資しやすくなると考える理由は?

電子記録債権化しても、補助金における債権の性格(債権金額や支払期日は検査完了後でないと確定しない)が変わらないわけだが、それでも、POファイナンスによれば金融機関から融資を受けやすくなると考える理由は何か。交付決定通知のみで金融機関に融資を申し込むのと同じなのではないか。

ものづくり補助金POファイナンスは、検査完了後でないと、債権金額が確定されないという補助金制度の性格に影響を与えないように制度設計されています。

 一方で、通常の債権(指名債権)が当事者の合意のみにより譲渡の効力が発生するため債権者が複数の譲受人とそれぞれ譲渡を合意すると、いずれも一旦有効になり(二重譲渡)、第三者対抗要件具備の先後により優劣が決まる仕組みであるのに対して、電子記録債権の譲渡は、電子債権記録機関の記録原簿に記録されることによって初めてその効力が発生するので、電子債権記録機関が矛盾する譲渡を記録することはないため、仕組み上、二重譲渡が発生しません。

 このように、電子記録債権は、債権の存在及び権利の帰属が法的に担保されており、担保の確実性が相対的に高いため、金融機関が融資を行いやすくなると言えるのです。

電子記録債権が、反社会的勢力に譲渡される恐れはないか?

電子記録債権を利用するためには、電子債権記録機関に利用者登録を行う必要がありますが、利用者登録に当たって、電子債権記録機関はいわゆる「反社チェック」を厳重に行うことが義務付けられております。

 さらに、POファイナンスにおける電子記録債権の場合は「利用規約」第7条1.⑵において、「譲渡先を金融機関、信用保証協会、原債権者、または当社もしくは信用保証協会が同意する先に限定することを発生記録において記録します」と規定しておりますので、電子記録債権が反社会的勢力に譲渡される恐れはありません。

電子記録債権と原因債権に対し、別個の支払いをさせられることはないか?

電子記録債権と、その発生の原因となった原因債権とは、別個の債権であるとのことであるが、補助執行団体(債務者)は、両方の債権に対して、別個に支払いをさせられることにならないか。

補助執行団体(債務者)と補助事業者(原債権者)は、POファイナンスの利用登録に際して、「利用規約」第11条⑴「債務者は、自らが債務者となる電子記録債権についての債務を、当社または決済銀行が別途指定する決済銀行の口座(以下、「決済銀行口座」という。)へ払い込む方法により履行することとします」の規定に同意することにより、補助金の決済を、POファイナンスを利用した電子記録債権によって行うこととすることを双方ともに意思表示したものとみなされます。

 すなわち、補助金の確定後に、補助執行団体がTranzaxの指定する決済銀行口座に補助金を払い込んだ場合には、補助執行団体は原因債権に係る債務についても履行を完了したことになり、結果として、電子記録債権も原因債権も消滅し、それ以上に別個の支払いをさせられることはありません。

ものづくり補助金POファイナンスの利用手数料の水準は?

Tranzax()が事業者に対して請求する「ものづくり補助金POファイナンス利用手数料」は、金融機関が徴収する融資利息とは別に、金融機関が徴収する融資利息の1/2かつ1%を超えない範囲で、個別に決定することとしております。

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